1. LEDフリッカー低減(LFM)とは?#
1.1. LEDフリッカーとは#
LEDフリッカーとは、LED光源をカメラで撮影した際、光源がちらついて(発光・消灯を繰り返すように)見える現象のことです。近年、LED光源は信号機・電光掲示板・ヘッドライト・テールランプなどに利用されることが増えており、LEDフリッカーが発生するリスクが高まっています。
LEDフリッカーは人間が撮影された動画を見る際に不自然に見えるだけではなく、画像を用いたセンシング(周辺環境認識)を行う際に重大な影響をもたらす場合があります。その典型的な例が信号認識(TLR, Traffic Light Recognition)です。
TLRは色情報を用いる必要があるため、主要な車載センサ(カメラ・LiDAR・Radar)の中でもカメラでのみ行うことが可能です。しかし、LEDフリッカーが発生するとどの色の信号が点いているか判別することができないため、TLRを行う上での大きな課題となります。
1.2. LEDフリッカーが発生する原理#
LEDフリッカーが発生する原理を以下に説明します。
LEDフリッカーはPWM(Pulse Width Modulation, パルス幅変調)されているLEDの発光タイミングと、カメラの撮像素子であるCMOSイメージセンサの露光タイミングの関係によって発生します。
図 1.26に示す通り、CMOSイメージセンサ露光時間内にLEDが発光した場合、カメラは信号の色を正しく認識することができます。
一方、図 1.27に示す通り、CMOSイメージセンサ露光時間内にLEDが発光しない場合、カメラは信号の色を捉えることができません
このように、CMOSイメージセンサの露光タイミングとLEDの発光タイミングの関係性により、発光が捉えられるフレームと捉えられないフレームが混在するため、光源がちらついて見えることになります。これがLEDフリッカーが発生する原因です。
1.3. LEDフリッカー対策の原理#
前述の原理により、LEDの発光周期より長くCMOSイメージセンサの露光時間を設定する事により、LEDフリッカーを低減することができることがわかります。LEDの発光周期は機種・地域によって多岐にわたりますが、例としてEN12966に規定されている周波数90Hzの場合、CMOSイメージセンサの露光時間を11msec(1/90 sec)に設定することで、露光時間内にLEDの発光を少なくても1回は捉えることができます。
注釈
上記の対策がLEDフリッカーの完全な抑制にはならないことに注意して下さい。LEDの発光周期により、それぞれのフレームの露光時間にLEDの発光が含まれる回数は変動する場合があります。この場合、撮像されたLED光源には明暗差が発生する場合があります。しかし、LEDの発光周期以上の露光時間を設定すれば、発光が消失することはありません。
1.4. TIER IV カメラによるLEDフリッカー対策#
ここまでの議論により、LEDの発光周期より長くCMOSイメージセンサの露光時間を設定する事により、LEDフリッカーを低減することができることが分かります。しかし、既存のCMOSイメージセンサでは露光時間を長く設定すると、画像が白飛びしてしまうという問題がありました。これはCMOSイメージセンサのフォトダイオードが長時間の露光により飽和してしまうことが原因です。
これに対して、TIER IVカメラに採用しているCMOSイメージセンサにおいては、イメージセンサの設計上の改善により飽和信号量が大きく改善しており、露光時間を長く設定しても白飛びすることなく撮像することが可能です。